シニアの「スポーツを続けたい」に、パーソナルトレーナーはどう応えるか?

パーソナルトレーナーの小林素明です。
今回もサッカーワールドカップは、大いに盛り上がりましたね。
日本では、40歳以上のシニアサッカー人口が、この10年で9割も増えているようです。 〜日経新聞 2026年6月27日朝刊より〜
この統計は2025年時点のものです。
ワールドカップの盛り上がりもあり、現在も増え続けているのではないでしょうか。
そんな中、静岡県では80歳以上のリーグも始まるなど、シニア世代のサッカーはさらに盛り上がりを見せています。
なぜ、僕がこの話題を取り上げたのか。
それは、スポーツを楽しむシニア世代が増えると、ジム通いやパーソナルトレーニングのニーズも高まる可能性があるからです。
スポーツをしている人は、なぜトレーニングを始めるのか?

僕のパーソナルジムで、長く継続されている方を見ていると、いくつかの傾向があります。
- 健康を強く意識されている方
- 趣味でスポーツをされている方
- 体を資本とされているご職業の方
もちろん、どれか1つだけが目的というわけではありません。
複数の目的を持ちながら、トレーニングを続けている方が多い印象です。中でも、趣味のスポーツはトレーニングと直結しやすいです。
そして、トレーニングの効果も感じてもらいやすいと思います。
- 「以前より動きやすくなった」
- 「疲れにくくなった」
- 「スポーツを続けやすくなった」
こうした変化が、トレーニングを続ける理由にもなります。
一般に50代以降は、筋肉量の低下が進みやすくなります。そのため、「筋力をつけたい」という目的だけではありません。
「できるだけケガをせず、好きなスポーツを長く続けたい」という意識も、強くなってきます。
「筋力をつけましょう」だけでは動かない

以前、僕のジムにスキーをされている男性が入会されました。きっかけは、スキーのコーチから「内転筋を鍛えなさい」と言われたことでした。
これは、パーソナルトレーニングを始めるきっかけとして、とても分かりやすいと思います。
「スキーをやっているから、筋力トレーニングを始めよう」
これでも、もちろん動機にはなります。ただ、これだけでは少し弱いかもしれません。
それよりも、信頼しているコーチから、「あなたは内転筋を鍛えたほうがいい」と具体的なアドバイスをもらったほうが、行動につながりやすくなります。
なぜでしょうか。
自分の弱点が分かると、それを克服することで、もっとパフォーマンスを高められるという「道しるべ」ができるからです。
これは、僕たちトレーナーにとっても大切な視点だと思います。
どのアドバイスなら、ジムを探すでしょうか?

例えば、次の3つのアドバイスがあったとします。
- A: 「筋力をつけたほうがいいですよ」
- B: 「ジムでトレーニングを教えてもらったほうがいいですよ」
- C: 「●●さんは内転筋を鍛えると、ワンランク上の滑りができますよ」
さて、どのアドバイスが一番、ジム通いにつながりやすいでしょうか?
僕は、Cだと思います。
「内転筋」という具体的な筋肉の名前が出てくることで、
「内転筋を専門的に教えてもらえるところはないかな?」
と、スマホで検索する可能性が高くなるからです。
もちろん、人によって検索の仕方は違います。それでも、パーソナルトレーニングが候補の1つに入る可能性は高くなるでしょう。
ここには、僕たちトレーナーが考えておきたいことがあります。
それは、「筋トレを売る」のではなく、「その人が抱えている具体的な課題を解決する」ことです。
パーソナルの体験レッスンにつなげるために

そう考えると、
- 「スポーツを始める」
- 「自分の弱点を知る」
- 「具体的な対策を知る」
- 「専門的に教えてもらえる場所を探す」
- 「パーソナルトレーニングを体験する」
という、いくつかのステップが見えてきます。
そして、体験レッスンに来てもらえた後が、僕たちトレーナーの大切な仕事です。初回の体験レッスンが、その後の継続につながる大きなポイントになります。
そのときに大切なのが、
「なぜ、今日ここに来てくれたのか?」
を知ることです。
単純に「運動不足だから」という答えだけではないかもしれません。
「久しぶりにスキーをしたら、以前より体が動かなかった」
「サッカーを始めたいけれど、ケガが心配」
「同年代の仲間とスポーツを楽しみたい」
こうした背景が見えてくると、トレーナーが提供するべきものも変わってきます。
以前、僕が書いた「選ばれるトレーナーの聞く力」についての記事も参考になると思います。
これから増えるかもしれない「シニア×スポーツ」
日本のスポーツ競技レベルは、サッカーや野球をはじめ、全体的に高くなっています。
特にサッカーは、昔では考えられないほど人気が高まっています。
今回のサッカーワールドカップの盛り上がりをきっかけに、
「もう一度、サッカーをやってみようかな」
「同じ年代の人たちがやっているなら、自分も始めてみようかな」
そんなシニア世代が、これからますます増える可能性があります。そうなったとき、僕たちトレーナーは対応できる準備ができているでしょうか?
トレーナーに求められる知識も変わっていく

例えば、
- 姿勢分析
- 機能解剖学
- 筋力・柔軟性測定
- スポーツ障害対策
- シニア世代の体力づくりの基礎
こうした知識は、少なくとも身につけておきたいところです。
もちろん、知識だけで十分というわけではありません。
実際のお客様の体を見て、話を聞いて、動いてもらう。
その中で、「この方には何が必要なのだろう?」と考えることが大切です。
僕も、まだまだ勉強の毎日です。学会やセミナーに参加したり、雑誌や書籍を読んだりしています。そして、学んだことを現場で試してみます。
うまくいくこともあれば、思ったような結果が出ないこともあります。
その繰り返しの中で、少しずつ自分の指導に落とし込んでいます。
「好きなことを続けたい」に、どう応えるか?

今回、シニアサッカーを例にしました。でも、同じことは他のスポーツにも当てはまると思います。
テニス、ゴルフ、ランニング、登山、スキーなど。
年齢を重ねても、好きなスポーツを続けたい人はたくさんいます。
そして、その中には、
- 「昔のように動けない」
- 「ケガが心配になってきた」
- 「もっと上手くなりたい」
- 「できるだけ長くスポーツを続けたい」
という悩みを抱えている人もいます。
ここに、僕たちトレーナーが力になれる場面があります。
大切なのは、単に「筋トレを教えられること」だけではないのかもしれません。
- その人が何のために体を鍛えたいのか。
- どんなスポーツを続けたいのか。
- どんな動きを良くしたいのか。
そこまで理解できると、トレーニングの提案も変わってきます。
例えば、「筋力をつけましょう」ではなく、
「スキーで安定したターンをするために、ここを鍛えてみましょう」
と伝えられる。
そうすると、トレーニングが単なる運動ではなくなります。その人が好きなスポーツを続けるための、大切な準備になります。
この記事を書いた人


小林素明 (パーソナルトレーナー)
テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten」などに多数出演し、メディアからも注目されるパーソナルトレーナー。30年以上の指導経験と健康運動指導士の資格を有し、1万レッスンを超えるパーソナルトレーニング指導の実績。特に40代からシニア世代向けの「加齢に負けない」トレーニングに定評があり、親切で丁寧な指導が評価されている。
医療機関との連携を通じて、安全で効果的なトレーニング法を研究し、病院や企業での腰痛予防に関する講演では受講者の98%から「分かりやすかった」と高評価を得る。また、パーソナルトレーナー養成講座の講師としても豊富な実績を誇り、多くのトレーナーの育成に貢献しています。
