効果的な姿勢改善:可動域と筋力バランスの整え方

パーソナルトレーナーの小林素明です。

姿勢改善トレーナー養成講座の受講者さんより、「姿勢改善の指導法について」ご質問をいただきましたので話します。

なぜ姿勢が崩れてしまうのか?

拮抗筋 大臀筋と腸腰筋

姿勢を良くするためには、まず姿勢を崩している原因を知ることが大切です。痛みや関節の変形、心理的な要因といった既往歴がなければ、多くの場合、筋肉の緊張や弱化が原因です。  

姿勢が崩れる2つの主な原因  

  1. 筋肉が緊張して短くなる
  2. 筋肉が弱化して長くなる

例えば、腸腰筋が緊張して短くなると、腰椎が引っ張られ、反り腰の原因になります。一方、腸腰筋が短くなることで、その裏側にある筋肉(大臀筋やハムストリングス)が伸ばされ、筋力が低下します。これを「拮抗関係」と呼びます。  

腸腰筋が緊張するとどうなる?  

姿勢股関節伸展

姿勢股関節伸展

腸腰筋が硬くなる状態を体感してみましょう。

次の動作を試してください:  

1. ズボン越しに腸腰筋の位置を手でしっかり掴む。  

2. その状態で股関節を後ろに伸ばす(伸展動作)。  

3. 手を離して同じ動作を繰り返す。  

注意:Gパンなど普段着で行うとしっかりと疑似体験できます。

比べてみると、腸腰筋を掴んだ状態では股関節の動きが制限され、やりにくいと感じるはずです。このように、筋肉が緊張すると可動域が狭くなるのです。  

腸腰筋の主な役割は股関節の「屈曲」です。その反対の動きである「伸展」を担当するのが大臀筋やハムストリングスです。しかし、腸腰筋が硬いとこれらの筋肉が伸ばされてしまい、十分な力を発揮できなくなります。その結果、大臀筋の筋力低下やお尻のたるみにつながります。  

つまり、腸腰筋が硬くなると、お尻が垂れてしまうと言えます。

筋肉が硬くなる原因は?

体の前後や左右のバランスが崩れると、一部の筋肉に過剰な負担がかかります。この負担を支えるために筋肉が緊張し続けると、疲労が蓄積し、やがて血行不良を引き起こして筋肉が硬くなります。

例えば、肩こりの原因としてよく挙げられるのが僧帽筋の緊張です。また、骨盤が前傾している場合には、腸腰筋や大腿直筋が硬くなりやすい傾向があります。

硬くなった筋肉は筋トレしてもいいの?

パーソナル指導女性スクワット

「不良姿勢の原因となる硬く緊張している筋肉に筋トレは必要?」と疑問に思う方も多いでしょう。

結論から言うと、体のアライメント(骨格の位置)が整っていれば、筋トレを行っても問題ありません。逆に、不良姿勢のまま筋トレを続けると、症状が悪化する可能性があります。

骨格がニュートラルな位置に保たれている状態で行う筋トレは、理想的なトレーニングといえます。そのため、スポーツトレーナーは常に「正しいフォームで行いましょう」と指導しているのです。

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硬くなった筋肉を改善するには?

硬くなった筋肉を改善するには、まず血行を良くすることが大切です。以下の方法が有効です:

  • 筋肉を温める:血流を促進し、緊張を和らげます。
  • ストレッチを行う:筋肉を伸ばして適切な可動域を取り戻します。

ストレッチで可動域が確保できたら、筋肉の収縮と伸展を繰り返す筋トレを取り入れることで、さらに血行促進が期待できます。ただし、この時も 正しいフォーム と 適切な可動域 を守ることが重要です。

ヒップアップ指導には注意が必要  

大臀筋を見るフィットネストレーナー

反り腰(骨盤の前傾)の対策には、大臀筋が弱く強化が必要になります。大臀筋を鍛えることでヒップアップ効果も期待できます。そこで、大臀筋を鍛えるべきだと考えるかもしれません。しかし、ここには注意点があります。  

股関節の伸展可動域が狭いままだと、大臀筋のトレーニング効果は十分に発揮されません。本来、股関節の伸展角度は15度程度まで可能ですが、腸腰筋が硬いとその手前で動きが止まり、大臀筋は完全に収縮できません。そのため、どれだけ頑張っても理想の成果を得るのは難しいのです。  

筋力アップのための効果的なアプローチとは?  

トレーニングを始める前に、関節の可動域を広げることが重要です。まず腸腰筋をしっかりストレッチし、正常な股関節の伸展角度に戻しましょう。

その後に大臀筋のトレーニングを行えば、筋肉にしっかり効かせることができ、ヒップアップ効果を実感できます。さらに反り腰の改善にもつながり、一石二鳥ですね。

お腹引き締めの効果的な指導法とは?

姿勢改善、ヒップアップとともに、お腹の引き締めリクエストも多いことでしょう。考え方は同じです。まず腹筋の拮抗筋はどこかを考えます。腹直筋として考えますと、拮抗している筋肉は脊柱起立筋となります。

ちなみに反り腰の人は、脊柱起立筋が緊張しやすいので腹直筋が伸ばされている可能性があります。まずは脊柱起立筋の緊張をゆるめるストレッチを行い、腹直筋の筋トレ(クランチなど)を行います。(ドローインも忘れずに)

つまり、背筋が硬い人は、お腹がたるみやすいと言えます。

まとめ

姿勢不良の原因は、痛みや関節の変形、心理的要因といった既往歴がなければ、多くの場合、「筋肉の緊張」と「筋力の弱化」の2つが考えられます。

特に、弱くなった筋肉に対して拮抗する筋肉は、硬直しやすい傾向があります。以下に、硬くなりやすい筋肉と弱くなりやすい筋肉の拮抗関係を示します。全ての人に当てはまるわけではありませんが、参考にしてください。

硬くなりやすい筋肉 ←→ 弱くなりやすい筋肉

  • 小胸筋 ←→ 菱形筋 (巻き肩や猫背の人に多い)
  • 脊柱起立筋 ←→ 腹筋群 (反り腰の人に多い)
  • 腸腰筋・大腿筋膜張筋 ←→ 大臀筋 (反り腰の人に多い)
  • ハムストリングス ←→ 大腿四頭筋 (骨盤後傾の人に多い)
  • 股関節内転筋 ←→ 中臀筋 (骨盤の傾きがある人に多い)

この拮抗関係を理解することで、トレーニング指導のスキルが大きく向上しますよ。

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