自重トレーニング指導者に欠かせない「間違ったトレーニングフォーム」修正、サポートの方法講座

自重トレーニング専門パーソナルトレーナーの小林素明です。せっかくのトレーニングも間違ったフォームで行うと、効果を損なうだけでなく致命的な関節の怪我を負うことになります。そのため、トレーニング指導者は正しいフォームでできているかのチェックは欠かせません。

ではトレーニング指導者として、どのうようにトレーニングフォームのチェックを行えば良いのか?を話します。

この記事では、明日からのトレーニング指導に自信が持てる、信頼されるトレーナーの近道というメリットがあります。

正しいトレーニングフォームの基礎となるのは?

正しいトレーニングフォームとは、関節の負担を最小限にし、主動筋に対して効果的な筋収縮を起こさせることです。よく目にする立位の解剖学的肢位が基本姿勢となり、その姿勢から各種目のフォームへと移行します。

よくある3つのトレーニングフォームの間違い

トレーニング現場でよくあるトレーニングフォームの間違いとして、1)骨盤~脊柱のアライメント 2)膝のアライメント 3)トレーニングフォームの軌道があります。

※アライメントとは骨の配列のこと。

1)骨盤~脊柱のアライメント 

背中が丸くなる(脊柱の後弯)の骨盤後傾、腰が反る(腰椎前弯)の骨盤前傾があります。このフォームでトレーニングを行うと、かなりの確率で慢性的な腰痛に悩まされることでしょう。理由は単純で、脊柱の後弯、前弯ともに丸くなった部位の脊柱に過大な負担がかかるからです。(周りの筋肉や靭帯の過緊張)

正しくは、解剖学的肢位にある脊柱の緩やかなS字カーブです。このS字カーブこそが、正しいアライメントで関節の負担を分散し、安定した姿勢を保持することができます。

2)膝のアライメント

スクワット動作において膝が内側に入る「ニーイン」、外側に開く「ニーアウト」なると、膝関節を痛める原因となります。これはランニング動作で顕著となり、膝の内側が痛む鷲足炎、膝の外側が痛む腸脛靱帯炎などの膝の炎症につながります。

3)トレーニングフォームの軌道

間違った関節の動かし方は、効果がないばかりか怪我を招きます。例を挙げると、スクワットでしゃがんだ時、つま先より膝が前方へ突出してしまうことがあります。これは股関節よりも膝関節の可動域が過大になり、膝を痛める原因となります。

パーソナルトレーナーによるトレーニングフォームの修正サポートの方法

では、トレーニングフォームの修正はどのように行えば良いのか?です。

1)骨盤~脊柱のアライメント の修正方法

立位姿勢において骨盤の前傾、後傾になっていないかをチェックする必要があります。簡易的に測定する方法として、壁にもたれて腰に手を挿入し「どのくらい手が入るか?」で前傾型、後傾型を判断することができます。(図を参照)

骨盤の前傾位、後傾位における緊張している筋肉、弱化している筋肉

正しい姿勢を継続的に保持するためには、骨盤前傾、後傾で推測される弱っている筋肉(筋力低下)、緊張している筋肉(柔軟性低下)の各々を筋力強化、柔軟ストレッチを実施する必要があります。

パーソナルトレーニング指導中でのアライメント修正法

ローイングモーションでの修正法

現場では、脊柱にゆるやなかS字カーブが描けるよう骨盤をサポートし、正しい姿勢へとも導きます。修正のコツは脊柱起立筋を軽くタッチし、脊柱を真っ直ぐにすることです。筋肉はタッチされると収縮しやすくなるため。

2)膝のアライメント

膝のアライメント修正には直接サポートする方法、目印を使用する方法があります。

直接サポートで膝のアライメント修正

直接サポートする場合は、お客さんの膝の前に構えて「両手で膝を包み込むようにして」膝をサポートします。動作に合わせて、膝の方向がつま先の方向と一致するように誘導します。トレーニング初心者の方には有効な手段です。

目印を使用して膝のアライメントを修正

トレーニングに慣れてきた方には、目印を使用する方法をお勧めします。それは膝の前方に筒状のもの(フォームローラーがお勧め)を配置するものです。スクワットの場合、2つ必要です。このメリットは、トレーニングを実施しているお客さんが自覚できることで、トレーニングフォーム習得が加速することです。

方法は脛骨に合わせてフォームローラーを配置し、スクワットの動作中に「膝がフォームローラーからずれていないか?」を鏡越しにチェックします。

両足スクワットの場合

スクワット動作で鏡越しで見ると、フォームローラーから膝の位置がずれている事が確認できニーイン、ニーアウトが一目瞭然となります。お客さんは目印を見ながらエクササイズでき、トレーナーが指示することもなく自然なアライメントの修正ができます。次にバックランジの場合を紹介します。(片足スクワットも同様)

バックランジや片足スクワットで起こる膝のアライメントチェック法

バックランジや片足スクワットも同様、脛骨に合わせてフォームローラーを立てておきます。ミラー越しにフォームローラーから膝がずれていないか?をお客さんもチェックできます。トレーナーは前方からも確認できます。

3)トレーニングフォームの軌道修正

トレーニングフォームの軌道修正は、1)と2)のアライメント修正も兼ねていますので、トレーナーの総合テクニックになります。スクワットを例に挙げて紹介します。

正しいスクワットのフォームの導き方

まずスクワットは股関節から始まり、膝関節、足関節と連動しながらスムーズな動作を行うことが重要です。そのためには、股関節の可動域を使い「屈曲」→「伸展」動作で大臀筋、ハムストリングス、大腿四頭筋が使えることが鍵となります。股関節の可動域をフルに使うには、骨盤の誘導が効果的です。

スクワットのフォーム修正サポート(骨盤誘導)

  1. 立位姿勢において解剖学的肢位を確認します。ただし、つま先はやや外側、足の幅は肩幅よりも広めに構えます。
  2. トレーナーは膝をつき、骨盤(腸骨)を両手で支え構えます。
  3. 「ではゆっくりしゃがんでください」と指示し、股関節が屈曲できるよう骨盤を誘導(骨盤が前傾)します。
  4. しゃがめる範囲(写真ではパラレルスクワット)で、次は「立ちがありましょう」と指示します
  5. スクワットを繰り返し行い、徐々に手を離しサポートなしでスクワットを実施してもらいます

動作中に脊柱の後弯や前弯が顕著になれば、再度初めからやり直す、手で脊柱をサポートし姿勢を修正する方法を取ります。

全身ミラーがパーソナルトレーニングの修正に欠かせない理由

正しいトレーニングフォームには、全身を映すミラーが欠かせません。なぜならば、指導者が「もう少し背中を伸ばしてください!」と声を張り上げるよりも、鏡越しに自分の姿勢を見てもらう方がフォームの修正が容易くなるからです。どんな小さなパーソナルジムでも全身ミラーは必要です。

プロが見逃す!ジムのミラーにはこんな付加価値サービスを生み出す

現在の自分の姿は誰でも気になるものです。ましてやトレーニングをしている方にとって、「筋肉がついたかな?」「引き締まったかな?」と見た目のトレーニングの効果も気になります

自宅に全身ミラーがある方は少ないでしょう。トレーニングの成果もパーソナルジムで見れる!という付加価値サービスになります。

なお、全身ミラーは両手を広げても伸ばしても自分の姿が見えること、ミラーは垂直に立てかけられていること。(ミラーの斜め立てかけはお勧めしません)

まとめ

いかがでしたでしょうか?トレーニング指導に欠かせないトレーニングフォームの基本サポート方法を紹介しました。トレーニングフォームのサポートの方法は、1つだけでなく複数持ち合わせておくことで、多くのお客さんに対応できるようになります。

まずは基本の方法をしっかりとマスターし、「この方法もいいじゃないか?」とアレンジを加えてみるとトレーニング指導も楽しくなりますよ。