リピーターが自然に増えるジムが、大切にしていること

パーソナルトレーナーの小林素明です。
パーソナルトレーナーやジム経営者の中には、「技術や知識には自信があるのに、なぜかリピーターが増えない」
そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
競合が増え、サービスが似通う今、選ばれ続けるために必要なのは、派手な戦略よりも現場での“サービスの考え方”です。
本記事では、実際の事例をもとに、リピーターが自然に生まれる理由を整理します。
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サービスの本質を考えさせられた、あるXの投稿
あるホテルでの出来事です。
スタッフの方が、宿泊者が「ミャクミャク好き」であることに気づき、ルームキーの封筒に、クリスマスツリーとミャクミャクのイラストを描いて手渡したそうです。
特別な設備も、コストのかかる演出もありません。ほんの小さな気づきと行動です。
その様子は写真付きでXに投稿され、多くの共感を集めていました。
この投稿を見て、
「どこのホテルだろう?」
「そんな対応をされたら嬉しいな」
そう感じた方も多いはずです。
ボク自身も、正直に言えば「一度泊まってみたい」と思いました。
差別化やブランディングだけでは、選ばれ続けない理由

書店やビジネス書を見ていると、「差別化」「ブランディング」「オンリーワン」といった言葉が数多く並んでいます。
パーソナルジムやフィットネスクラブにおいても、これらは確かに重要な視点です。
- 他と何が違うのか
- どんな価値を提供しているのか
- どんな想いで運営しているのか
これらを言語化し、伝えることは欠かせません。
ただし、現場に立っていると、それだけでは説明がつかない場面を何度も目にします。
特別に目立つ広告を出しているわけでもなく、派手な打ち出しをしていないのに、予約が途切れないトレーナーやジムが存在します。
このことは
「何を売っているか」ではなく、
「どう関わっているか」にあります。
どれだけ優れたコンセプトがあっても、お客さんが実際に触れるのは、目の前にいるトレーナーの態度や言葉、空気感です。
最近では、介護予防施設や病院併設ジムなど、専門性が高く、安心感のあるサービスも増えてきました。
つまり、
「運動指導ができる」
「身体を良くする知識がある」
だけでは、差別化になりにくい時代です。
その中で選ばれ続けるのは、
- 自分の状態や背景を理解しようとしてくれる人
- 安心して任せられると感じられる人
です。
これは、ポスターやホームページでは伝えきれませんし、SNSの発信だけで完結するものでもありません。
日々のセッションの中で、どれだけ丁寧に向き合っているか。そこにしか表れない価値です。
だからこそ、差別化やブランディングを否定する必要はありませんが、それらは土台が整ってこそ機能するものだと感じています。
土台とは、一人ひとりのお客さんとどう接しているか。どんな姿勢で現場に立っているか。
ここが弱いままでは、どれだけ立派な言葉を並べても、選ばれ続ける理由にはならないと思うのです。
リピーターが生まれるトレーナーの共通点

僕が現場を見てきて感じるのは、リピーターが多いトレーナーやジムには、共通して次の感覚があるということです。
「このトレーナーは、自分のことを分かってくれている」
技術や知識だけではありません。お客さんの心に、きちんと触れているかどうか。
この感覚があると、多少条件が変わっても、簡単には他へ移りません。
サービスの出発点は「当たり前の徹底」
では、お客さんの興味や好みを無理に探す必要があるのか。僕はそうは思いません。
出発点は、ごく基本的なサービスを、徹底して行うことです。
- 目を見て挨拶をする
- 必ず名前で呼ぶ
- 指を揃え、手のひらを見せて案内する
- トレーニング内容を記録する
- 前回からの体の変化を確認する
- 体調を気にかける言葉をかける
- 施設内を徹底的に清潔に保つ
どれも特別なことではありません。しかし、忙しくなるほど抜け落ちやすい部分でもあります。
この「当たり前」を丁寧に積み重ねていくと、次に何をすべきかが自然と見えてきます。
小さな行動が、大きな波及効果を生む

今回のホテルのスタッフの方も同じです。お客さんの持ち物に目を向け、小さな行動に移した。
その結果、お客さんの心が動き、Xに投稿され、2,600人以上が「いいね」を押しました。
一人のお客さんへの対応が、多くの人に届いています。
これが、リピーターにつながり、口コミにつながる流れです。
選ばれ続けるために、現場で大切にしたいこと

リピーターが多いと、パーソナルトレーナーであれば、新規集客に追われる時間が減ります。ジム経営であれば、広告費に頼る割合が小さくなります。
「なんだ、そんなことか」そう思われるかもしれません。ですが、今回のXの投稿は、サービスの力をはっきりと示しています。
選ばれ続けるかどうかは、派手な戦略よりも、現場での一つひとつの行動にあります。
僕自身、サービスとは何かを、あらためて考えさせられました。
【補足】 以前、徳島で出会った指導者の姿から、「成果を出し続けるパーソナルトレーナーに共通する考え方」について書きました。今回の内容は、その記事とも深くつながっています。
この記事を書いた人


小林素明 (パーソナルトレーナー)
テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten」などに多数出演し、メディアからも注目されるパーソナルトレーナー。30年以上の指導経験と健康運動指導士の資格を有し、1万レッスンを超えるパーソナルトレーニング指導の実績。特に40代からシニア世代向けの「加齢に負けない」トレーニングに定評があり、親切で丁寧な指導が評価されている。
医療機関との連携を通じて、安全で効果的なトレーニング法を研究し、病院や企業での腰痛予防に関する講演では受講者の98%から「分かりやすかった」と高評価を得る。また、パーソナルトレーナー養成講座の講師としても豊富な実績を誇り、多くのトレーナーの育成に貢献しています。
