【指導の盲点】レッスンでは消える痛みが、なぜ繰り返すのか?

パーソナルトレーナーの小林素明です。
僕のパーソナルジムに、長らく腰痛に悩まされていたお客様が、運動での改善を目的にご入会されました。
その当時は、日中に腰が辛くなり、お客様が横になって休むことが多かったのです。
僕はまず動作チェックを行いました。すると、明らかに骨盤と股関節の動きが悪かったため、骨盤まわりのトレーニングを中心としたメニューを構成しました。
その効果があってか、お客様の痛みは徐々に緩和していきました。最終的には、関西万博で一日中歩き回るほどの大きな改善がみられたのです。
しかし最近になって、「今週はこの辺りが辛いです」と、お客様が臀部を指差してピンポイントの痛みを訴えることが多くなりました。
パーソナルトレーニングや施術の現場で、このような経験はありませんか? 「しっかり動けているはずなのに、おかしいな……」と思う瞬間です。
明らかに動作は良くなっているのに痛みが戻る理由

考えられる部位のストレッチなどを指導すると、レッスン終了時には「スッキリしました」と、お客様の症状は改善されます。しかし、次のレッスンではまた「痛みます」と、同じ状態を繰り返してしまうのです。
硬直している部位を分析すると、臀部の小臀筋や大腿筋膜張筋が推測されました。触診させてもらうと、これらの筋肉がかなりの緊張を起こしています。
「これはおかしい」
そう感じた僕は、ジムの中だけでなく、お客様の「1日の日常生活の動作」を細かく確認させてもらいました。 その時、指導者としての経験から、僕の頭にある仮説が浮かびました。
「ひょっとすると、椅子の座面の上にクッションを敷いているのではないか?」
お客様に尋ねてみると、やはり次のような答えが返ってきたのです。
「腰痛にいいというクッションを、椅子の上に敷いています。私はこの椅子に座っていることが多いです」と。
沈みすぎず、硬すぎず。理想の座面は「新幹線のシート」

椅子の座面は、柔らかすぎても、硬すぎても腰に負担がかかります。大切なことは「脊柱や骨盤が中間位になること」です。
座面が柔らかすぎると、骨盤が沈みやすくなり、骨盤が後傾して中間位を保つことができません。反対に硬すぎると、お客様は座っていること自体が辛くなります。
座面の良い例として、僕がいつも参考にあげるのが「新幹線の椅子」です。
新幹線は長時間の移動を前提にしていますので、利用者にとってシートの快適性は欠かせません。新型車両になればなるほど、快適性を感じます。まさに最先端の技術が詰まっていると思います。
あの新幹線のシートは、硬すぎず、柔らかすぎず、まさに「中庸(ちゅうよう)」の代名詞ともいえます。
お客様に詳しく聞きますと、使用している腰痛クッションは非常に柔らかいとのことでした。
僕が新幹線のシートの話をしますと、お客様はかなり納得がいった様子で、「今日からクッションを外して座ってみます」とおっしゃいました。
すっかり腰痛がなくなった!筋肉の緊張が消えた瞬間

次のレッスン(一昨日)の時、お客様からとても嬉しいご報告をいただきました。
「全く痛みがなくなりました。驚きました!」
お客様の感激した表情を見て、僕も飛び跳ねるほど嬉しかったです。
念のため、硬直していた部位(小臀筋、大腿筋膜張筋)を僕が触診させてもらいました。すると、嘘のように緊張がほぐれ、筋肉が柔らかい正常な状態になっていたのです。
これほどの劇的な成果があったことは、僕の指導経験の中でも今までになかったことです。
痛みの原因は「日常生活」に潜んでいる

実は、以前にも同様のケースが2件ありました。
それらも同じく腰痛クッションですが、お尻がすっぽり入るドーナツ状のタイプです。これは流石に長時間座っていると、お客様は身動きが取れず、疲れてしまいます。
腰痛クッション自体が悪いというわけではなく、お客様の体に「合っている場合」と「合っていない場合」があるということです。
先ほども言いましたが、
大切なことは骨格の位置を正常に保つことができ、周辺の筋肉に負担をかけないことです。
痛みの原因が日常生活にあるということはよくあります。お客様としては、「重たいものを持っていないのに……」と考えがちですが、これはそう思って当然です。
他にも次のような事例が、レッスン中に僕の元へよく寄せられます。
- 手首が痛む → iPadを片手で持っていた
- 血圧が高い、いつもより疲れる → 睡眠不足
- 脛が痛む → 歩きすぎた
お客様の「なぜ痛むのか?」にしっかり応えることは、お客様がジムをリピートする条件の1つとなりますので、トレーナーとしてとても重要です。
パーソナルトレーナー、治療家に必要な3つのスキル

パーソナルトレーニングでの限られた時間だけでなく、お客様が24時間をどう過ごしているかを見抜くこと。そのために必要なのが、次の3つの要素です。
- 丁寧にヒアリングを繰り返すこと
- 解剖学やキネシオロジーなどの基礎的な知識を構築すること
- ケーススタディをたくさん持つこと
これらは、パーソナルトレーニングだけでなく、治療院やサロンを運営される方にとっても必要不可欠なものです。
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まとめ
僕たちがお客様の日常に寄り添い、小さな変化を見逃さないこと。それが、プロとして提供できる大切な価値ではないでしょうか。
ジムの外にあるお客様の生活環境まで見抜く力は、信頼される指導者になるための本当に大切な一歩だと、僕は今回の経験から改めて強く感じました。
この記事を書いた人


小林素明 (パーソナルトレーナー)
テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten」などに多数出演し、メディアからも注目されるパーソナルトレーナー。30年以上の指導経験と健康運動指導士の資格を有し、1万レッスンを超えるパーソナルトレーニング指導の実績。特に40代からシニア世代向けの「加齢に負けない」トレーニングに定評があり、親切で丁寧な指導が評価されている。
医療機関との連携を通じて、安全で効果的なトレーニング法を研究し、病院や企業での腰痛予防に関する講演では受講者の98%から「分かりやすかった」と高評価を得る。また、パーソナルトレーナー養成講座の講師としても豊富な実績を誇り、多くのトレーナーの育成に貢献しています。
