パーソナルトレーナーのためのトレーニング指導の基礎知識「スクワット動作の代償パターンを見極め」と「修正トレーニング指導法」

パーソナルトレーナーの小林素明です。

お客さんから「長時間、走ると腰が痛いです。なぜですか?」 パーソナルトレーニングの現場では、このような具体的な質問をよく受けます。そのためパーソナルトレーナーは、お客さんの悩みに対して適切なトレーニング指導をすることが求められます。

中でもスクワット動作は、体幹、股関節、膝関節、足関節のスムーズな連動が必要となります。間違ったスクワットフォームは、走る動作にも直接影響を及ぼし、トレーニングでも怪我のリスクが高くなることが知られています。

そこでパーソナルトレーナーとして欠かせな知識として、なぜ間違ったスクワットのフォームになってしまうのか?を解説し、プロの指導者としてのトレーニング指導法を紹介します。

注意:トレーニングフォームの分析には、筋肉の硬直、弱化によるもの、整形外科的疾患(既往歴含む)、トレーニングのスキルなどを考慮に入れて指導する必要があります。

正しいスクワットのフォームとは?

正しいスクワットのフォームは、臀部を優先してしゃがみ→体幹と下腿のベクトルが同じ方向、膝が爪先より手前にあること、膝とつま先の向きが同じ(アライメント)です。これは、股関節の屈曲から伸展をスムーズに行うために必要な条件となります。

よく知られている間違ったスクワットフォーム

よくある間違ったフォームとして、しゃがんだときに「膝が前方へ突き出す(膝関節伸展モーメント)」ことで、大腿四頭筋が優先して筋活動が行われるため、膝関節の負担が増加、股関節の負担が減少する。このため、よく膝を痛めるスクワットとメディアで紹介されています。

この「膝が前方へ突き出す(膝関節伸展モーメント)」のフォームの修正法のポイントは、膝伸展から股関節の伸展優位にすることです。シンプルな方法としては、椅子からの立ち上がり動作で股関節伸展の訓練を行うことです。

また、足関節の硬さがあるために「膝が前方へ突き出す(膝関節伸展モーメント)」として現れることがあります。この場合には、踵の下に3センチ程度の台を挟むことで、股関節の伸展優位のスクワットへと移行しやすくなります

よくある間違ったスクワットのフォーム(代償動作)

ここからがパーソナルトレーナーとしての腕の見せ所となります。フィットネスジムでよく見かける間違ったスクワットフォームです。間違ったフォームは、股関節、膝関節、脊柱を痛める原因となります。この間違ったフォームは、本来のフォームから逸脱する「代償動作」と定義されます。この代償動作がある場合には、トレーニングをやればやるほど、怪我のリスクが高くなりますので、トレーナーは安全で効果的なフォーム改善が必要です。

これから紹介する代償動作は、「背中を伸ばしてください!」「膝を真っ直ぐにしてください!」という声がけだけでは、根本的な解決になりません。なぜならば、代償動作が起こるのにはきちんとした原因があるからです。その原因として挙げられるのが、筋肉の硬直(緊張)、筋肉の弱化です。

パーソナルトレーナーのためのトレーニング指導のフロー

  1. フォームのチェック
  2. なぜ間違ったフォームになってしまうのか?(原因を探る)
  3. 原因となる筋肉のトレーニング
  4. ビフォーアフターのチェック

この手順を繰り返すことで、フォーム改善から効果的なトレーニングへと導くことができます。

ではここからはスクワット動作で起こる代表的な代償作用(間違った動作)について紹介します・

腰椎前弯パターン(間違ったスクワットフォーム)

しゃがんだときに腰が反った姿勢となる「骨盤前傾」「腰椎前弯」パターン。このパターン特徴として、腰痛が起こりやすい(既に腰痛の場合もあり)ことがあります。考えられる原因として、弱っている筋肉「腹筋群」「大臀筋」、硬くなっている筋肉「脊柱起立筋」「腸腰筋」です。

正しいフォームへ導く、克服するトレーニング指導として

腰椎前弯パターンの方の場合、腰背部の緊張が高いために腹筋群、大臀筋が弱化する傾向にあります。そこで弱っている筋肉には、強化トレーニング。緊張が高い筋肉には柔軟ストレッチが必要になります。柔軟ストレッチ→強化トレーニングという手順で行うと効果的な克服トレーニングとなります。

柔軟ストレッチ 腸腰筋ストレッチ

伸ばす筋肉: 腸腰筋
運動方法:

  1. 足を前後に開きます
  2. 両手をお尻に添えて、お尻を中心に体をやや前方へ移動します
  3. 後ろ足の太ももの付け根(腸腰筋)が伸びてきます
  4. 自然呼吸で30秒間静止します
  5. 反対側の足も同様に行います

柔軟ストレッチ 脊柱起立筋

伸ばす筋肉: 脊柱起立筋、腹直筋腰方形筋
運動方法:

  1. 四つん這いになります
  2. ゆっくりと背中を丸めます(猫のポーズ/脊柱起立筋が伸びます)
  3. 自然呼吸で5秒間静止します
  4. ゆっくりと体を反ります(犬のポーズ/腹直筋が伸びます)
  5. 自然呼吸で5秒間静止します
  6. 2〜5を繰り返します

ポイント: 動作をゆっくり行うと効果がアップします

強化トレーニング 大臀筋トレーニング

主動筋:大臀筋

方法: 中腰姿勢になり、胸の前で両手を組みます。片足を後方へ伸ばしたまま、左右に弧を描くようにして移動します。爪先をタッチするだけにします。

回数: 20往復

強化トレーニング 腹筋トレーニング

主動筋: 腹横筋、内転筋群 

方法: まずドローインで腹筋群を活性化させます。(写真上) お腹を凹ませて、30秒間浅く呼吸を行います。その後に腹圧を保ったままで左右に足をスイングします。体が動かないようにします。

回数: 20回

狙い: 腰椎前弯パターンは腹圧の低下対策が必要となるため、腹圧を高めるトレーニングから開始する

腰椎後弯パターン スクワットの代償

このパターンも腰痛になりやすく、背中が丸くなっています。骨盤が後傾し、腰椎後弯。デスクワークの方に多い姿勢。考えられる原因として、弱っている筋肉「腸腰筋」「大腿四頭筋」、硬くなっている筋肉「ハムストリングス」「腹筋群」「下腿三頭筋」です。

ニーイン トゥアウト(膝の外反)

しゃがむことで膝関節が内側、爪先が外側へ向くことが特徴です。いわゆる内股で女性の方に多い。考えられる原因として、弱っている筋肉「中臀筋」「大臀筋」、硬くなっている筋肉「内転筋群」「大腿筋膜張筋」です。

ニーイン トゥアウトの対処法がわかる記事

スクワットの代償動作 まとめ

いかがでしたでしょうか? 今回はスクワット動作の間違ったフォーム(代償動作)を紹介しました。冒頭にも述べましたように、スクワット動作は下半身トレーニングの基礎となり、股関節、膝関節、足関節に関わる筋肉の状態を知ることができます。

例えば、お客さんから「長時間走ると腰が痛い」と言われた場合、どんな指導をすれば良いのか? その対策のヒントがスクワットの代償動作にある可能性が高く、腰椎前弯パターンかも?と推測ができるのです。その通りであれば、腰椎前弯パターンのマニュアルに沿ってトレーニング指導を行えば、腰痛改善と綺麗なフォームで走ることができます。

トレーニング種目ありきではなく、今の●●さん(お客さん)には大臀筋の強化が必要。だから、バックランジ、バックブリッジを行いましょう、と強化するべき筋肉が目的、トレーニング種目は手段として捉えることが重要です。

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